ミハエラと申します。現在は茨城県つくば市に住んでおり、ルーマニア語/英語を教えます。また翻訳・通訳の依頼もお受けいたします。


by Mihaela_Romania

大学生における初対面会話展開パターン

大学生における初対面会話展開パターン

-日本語母語話者同士の会話を通して-


1.はじめに


 初対面会話は人間関係構築の第一歩だと思われる。友人関係を構築できるか否かは初対面である程度決まり(Berg&Clark,1986)、また、対人関係の発展過程を考える際、最も初期の段階から相手に対する認知というものが非常に重要になっており、会話者や会話に対して好印象を抱くことと、相手の会話者との将来の関係性に対する肯定的な認知に関連がある(小川,2000)という。従って、この敏感な第一歩でどのように話すか、どんな内容のものを初対面の話題とするか、初対面の会話として何が適切で、相手に好印象を与えるかなどについて考えることが非常に重要だと思われる。

また、このような初対面としての適切さ、つまり、どのように話すか、どんな話をしたら失礼にならないか、どんな話を回避すべきかというものは、文化によってかなり違ってくるだろう。日本文化圏には日本文化圏なりの初対面会話展開パターンがあり、ほかの文化圏にもそれなりの初対面会話展開パターンがあると考えられる。従って、異文化コミュニケーションが盛んに行われる今日では、ミスコミュニケーションを避けるために、それぞれの文化圏における初対面コミュニケーションの特徴を更に知る必要があるということはもう言うまでもない。

筆者は中国文化圏出身のため、初対面会話の展開パターンにおける日中対照研究を行いたいと考えているが、今回は最初の試みとして、日本語母語話者同士の初対面会話を通して、日本文化圏の初対面会話展開パターンを探りたいと思う。


2.先行研究


 三牧(1999)では、日本人大学生の初対面会話を分析対象とし、日本語社会における話題選択スキーマの存在及び話題選択に関与する種々のストラテジーを検証した。その結果、総話題数265の95%が23話題項目、8カテゴリーに集約され、話題選択には共通性がきわめて高く、大学生初対面会話における話題選択スキーマの存在が実証された[i]。また、話題選択ストラテジーとして、選択源から(1)直前の発話を取り立てる(2)〈基本情報交換期[ii]〉で得られる情報の中から選択する(3)初対面話題選択肢リストの中から選択する、内容から(4)共通点を探索し強調する(5)相違点に関心を示す(6)危険な話題を回避するという6種類を認定した。

 また、奥山(2000)では、女子大学生による初対面会話を分析対象として、日韓対照研究を行った。この研究では、奥山(2000)は話題を属性に関する話題、つまり、「年齢、学年、居住地域、専攻などの大学生としての一人の人間に付帯する基本的な指標に関する話題」、属性から派生する話題、つまり、「属性の話題が出た後でそれに派生して出てくる話題、例えば居住地から現在地まで来た方法や所属学部の男女比などの話題」、そして非属性の話題、つまり、「属性および属性に派生する話題ではないもの、すなわち、ボーイフレンド、就職に関するいわゆる私的な話題など」という3種類に分けている。その結果、質問による属性に関する話題は日韓において相違が見られなかったが、自己開示による属性に関する話題は韓国が日本より2倍弱多かった。

 謝(2005)では、女子大学生を対象に、初対面会話の最初の5分に注目して、日中対照分析がなされている。その結果、最初の5分間には、「身上的情報」の話題がそれ以外の話題より多く取り上げられる傾向が見られた。ここでいう身上的情報の話題とは、会話参加者の名前、所属、研究テーマ、そして住まいなどに関するものを指す。

張(2006)でも、女子大学生による初対面会話の最初の5分を研究対象し、日台対照分析を行った。その結果、初対面会話の開始部の切り出し方法において、定型的な挨拶言葉[iii]はもっぱら日本グループに出現しているのに対して、開始の確認やすぐ自己紹介に入るのは台湾グループにしか現れないという違いが見られた。また、相手に求める身上的情報の内容上において、日台ともに学科、学年、名前の情報が必ず必要であるが、ただし、日本グループは名前についての情報をより重視するという傾向が観察された。

しかし、以上のような研究は10年程前の研究であったり、初対面全体会話の最初の一部しか分析していなかったりするため、今の時代にも通用できるかどうかは疑問だし、初対面会話の全体像もまだ見えないのは問題である。



3.研究課題



三牧(1999)では、話題選択の観点から、初対面会話全体を(1)基本情報交換期:「相互に関する基本的な情報を交換するステージ。自己紹介あるいは質問-応答形式による情報交換が活発に行われる」、(2)話題選択-展開期:「特定の話題を選択し展開するステージ。大話題-小話題のように下位話題を有する階層的な構造を示すことが多い」、(3)終了期:「新規話題を採用しないことを確認し、あいさつ、定型表現などを経て会話が終了するステージ」という3期に分けている。本研究はこの考え方を援用し、初対面会話の全体的な展開パターンを探るために、この3期に沿って、以下の研究課題を設定する。

RQ1.基本情報交換期において、

1-1会話がどのように切り出されるか。

1-2どんな内容の「基本情報」が交換されるか。

1-3交換された「基本情報」はどんな方法で交換され、また、それにはどのような傾向が見られるか。

RQ2.話題選択-展開期において、

2-1何が話題として選択されるか。

2-2話題選択において、どのようなストラテジーが使用されるか。

RQ3.終了期において、

3-1 終了の仕方にはどのようなタイプが見られるか。

3-2終了末段階に、どんな言語行動がみられるか。


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[i]三牧(1999)では、話題選択スキーマについて定義していないが、「文化を共有する集団には一般的あるいは典型的な知識の集合であるスキーマ(schema)が共有されると考えられているが、話題選択に関しても『初対面会話における話題選択スキーマ』が共有されている」という記述があり、また、同様の話題に共通して付加するラベルを「話題項目」と名付け、まとめられた 23話題項目をさらに内容の関連性から、大学生活、所属、住居、共通点、出身、専門、進路、受験の8種類にカテゴリー化した。この8話題カテゴリーと23話題項目合わせて、初対面話題選択肢リストと称する。

[ii]三牧(1999)では、話題選択の観点から、初対面会話全体を(1)基本情報交換期(2)話題選択-展開期(3)終了期の3期に分けている。詳しくは本研究「3.研究課題」のところをご参照。

[iii] 張(2006)では、「初めまして、どうぞよろしくお願いします」や、「おはよう(ございます)」「こんにちは」「こんばんは」などを定型的な挨拶言葉とみなしている。
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by Mihaela_Romania | 2011-09-16 02:19