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ミハエラと申します。現在は茨城県つくば市に住んでおり、ルーマニア語/英語を教えます。また翻訳・通訳の依頼もお受けいたします。


by Mihaela_Romania

吹雪の中のブカレスト

  冬が終わりかけていると思ったら、さらに本格的になってきた。昨日から雪が降りだし、今朝窓越しから外を見たら、すごく積もっていた。こんな冬のとき、外に出られないし、家の中でごろごろしているだけです。
 今日は新しい本を読み始めた。準之助吉行の「夕暮まで」と言う本。
  ネットででこんなレビューが見つかった。
  
  「中年男性と若い女性の逢瀬。吉行のテーマである男性の性への向き方と、家族への向き方と、そして飽くなきつづく日々の生活への倦怠感と恐怖。短い文章の連続で、長編というほど長くもない。緩慢で、全体的に弛緩してて、読むこと自体はすごくあっさりしてる。ただ吉行の人間観察の視線が、ほんのちょっとした行間からときおり垣間見えて、その感情の機微が読後感をある種異様な気持にさせる。ふしぎな作品かなって、思う。」
「主人公のほうは四十代半ばといったところで、女性のほうは二十二、三歳か。この女性が頑なに処女を守り抜こうとするのは、なんともおもしろい描写かしらね。処女を喪わしめる行為以外はことごとく受け容れながら、しかしそれでも処女だけは守ろうとする。行きずりからの関係の、中年男性とはそこまでの関係に行くのは徹底的に拒絶する。しかし処女以外はどうともよい。ここらはなんとも、むずかしい問題かしらね。」
「処女喪失は大なり小なり、その人にとって人生の看過できない一事件である、かな。‥ただここの、処女にまつわる恋愛の問題ってあまり公的には語られない。処女がどうこうだとか、女性はこうあるべきなのだーとか、そういった感じの瑣末の議論というのはいつの時代でもあるものだけど、でも人と人との関係性においての処女っていう、恋愛と性のからみ合う領域の課題に、真正面からとり組めた人というのは、そういないのでないかな。それは処女というのはいろいろ厄介な問題があるみたいで、そしてその厄介さは無意識のもぞもぞとからまり合う部分が、意識上にのぼることがあんまりないことが関係してるのかなって気がする。フェミニズムも、この手の問題には十分に答えてないようにみえるし、この「夕暮まで」という作品は、まさにそういった処女性の問題に老練な男性が向いあう、そしてそのことに恐怖する小説だっていっていいと思う。‥だからこの作品はひどくざらっとしてる。それを美しい、なんていってもいいのかな。美しい場面がいくつも挿入された小説だけど、その美しさの狭間に吉行の孤独の視線がある。その視線が、私をしてひどく奇妙で、落ちつかない気分にさせる。」
「女性が処女を喪失する場面は、直接的には書かれてないのよね。女性が処女を喪った場面、そしてそれを破った男も、この小説にはつよく登場しない。ただ中年の男性の眼差しがある。その眼差しが、この作品を貫く、女性と性の問題そのものなのでしょうね。」
by mihaela_romania | 2010-02-08 00:39 | 日々のつぶやき